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小説「新・LOVE論」第2章

1 :申魔法楽団:2000/10/25(水) 19:46

おかげさまで第2章です。
果たして、終わりまでに何度削除されるのでしょうかね。
(↓過去ログ)
http://www.geocities.com/monkeymagicjp/file/love1.html


2 :名無し娘。:2000/10/25(水) 21:17
index.htmlは置いたほうが良いと思うsage

3 :申魔法楽団:2000/10/25(水) 23:10
>>2さん、どうも。
置いてみました。

4 :これまでのあらすじ:2000/10/25(水) 23:11

娘。小説にハマったつんくは、それだけに飽きたらず現実を小説世界に近づけようと、
画策を始めるのだった……


5 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:12

        ◇

今夜は十五夜。

バスケットにサンドイッチ詰めて、
裏山へ出かけよう。

おもいでの場所を掘り返す。
爪が割れて、血がでても平気。

はい、ちゃんとありました。
キラキラ光る、市井ちゃんのカケラ。

涙をたっぷりふりかけて、呪文を唱える。

アオイツキのマホウ。


6 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:12

わあ!

(ただいま後藤)
(おかえりいちーちゃん)

すっかり、もとどおり。

ワンステップ、
ツーステップ、

市井ちゃんと手をつないで、


踊る。
踊る。


7 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:13

嬉しいな。
市井ちゃんに会えて、嬉しいな。

朝になると、またお別れ。
だから、今は、ぴったり寄り添っていよう。

冷たい土。
草を揺らす風。


月夜の晩。

2人だけの秘密。


(『ひゃくまんつぶのなみだ』より)

        ◇


8 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:13

さて、独自に仕入れた情報から<モーニング娘。>を題材にした小説について、少し書いてみたい。

「娘。同士なら、誰でもいいんとちゃうん」などと思う人もいるだろう。だが、やはり、
というか、人気のある組み合わせというのは、厳然と存在する。
俺が興味深く思ったのは、5月に脱退したはずの市井紗耶香を中心とした取り合わせが、
未だに根強い人気を保っている、ってことだった。
(これは、福田明日香や石黒彩がほどんど出てこないことと組み合わせて考えると興味深い)


9 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:14

目に付いたものをあげていくと、

やぐちゅー(これは前章で取り上げた。矢口と中澤だ)
いちごま(今回、取り上げる。市井と後藤)
いちかお(市井と飯田)
いちなち(市井と安倍)
いしよし(石川と吉澤)
やぐよし(矢口と吉澤)
やぐなち(矢口と安倍)
さやまり(市井と矢口)
K1(保田と市井)
KU(保田と中澤)
のの裕(辻と中澤)
ののかお(辻と飯田)
みちごま(なぜか平家と後藤)
みっちゅー(平家と中澤)
……。
……。


10 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:14

取りこぼしがあるかも知れないし、これからも増えてゆくだろう。これが全部では、当然、ない。
こんな感じで、ファンのみんながオリジナルの想像を働かせ、二次創作してくれている、ってことは、つまりは、いよいよ、娘。たちは本当の意味でビッグになってきたんじゃないか、
ってことだ。

<モーニング娘。>は、出来るだけ許容度が広く保てるよう、メンバー選びからプロモーション
まで、努めて意識して創り上げてきた。
だが、ここに来て<モーニング娘。>は、俺の手から飛び出し、遙かに大きなグループに
なったのだ。

俺は、俺自身が<モーニング娘。>を楽しんでいるのだから。


11 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:15

「つんくさん、ここ、どう歌えばいいですか?」

俺は、後藤の歌を、上の空で聴いてしまっていた。

「ああ、ゴメンゴメン。もう一回、歌ってくれるか」
「はーい」

新曲の収録で、今日と明日、スタジオを借りている。
まあ、二日で終わるはずはないんやけどな。

「……つんくさん? 大丈夫ですか」

また、ぼーっ、としてしまった俺を、後藤は心配そうな表情で眺めていた。


12 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:15

「なあ、後藤」
「……はい」
「お前、市井がおらんようなって、淋しいか?」
「はあ?」

後藤は、質問の意味が分からなかったのか、きょとんとした顔になった。

「市井と、もう一回、やり直したいとは思わへんのか?」
「……」

後藤の不思議そうな表情が、俺には不満だった。
(後藤は、市井のことを思い出すたび、淋しくなって、「きゅ〜ん」と泣きよるはずなんや)

「そんな訳ないやろ!」と、とりあえず、自分にツッコミ入れておく。


13 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:16

「最近、後藤、元気やな。市井と連絡とりあってるんか?」
「ええと、市井ちゃんとは、メールのやりとりを何回か……」

そうっ! メンバーで市井のことを市井ちゃん、と呼ぶのは後藤だけなのだ。他のみなは
紗耶香と呼ぶ。
(ああ、エエなあ)と俺は、言葉の響きに酔っていた。
「でも、やぐっちゃんの方が、市井ちゃんとはマメに連絡とりあってるみたいで──」
「待てぇ!」

俺は、いちごまの空想に浸っていたのだ。(昨日読んだのが、市井を思うばかり、オカシク
なってしまう後藤の話だった)ここで、いちやぐに移行してしまっては盛り上がりが中途半端だ。
ここは、無理やりにでも、

「なあ、後藤。今度、市井と会ってみいひんか」
「え? 市井ちゃんと会えるんですか?」


14 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:16

後藤は、笑顔になった。
そうや、そうでないといかんで。

市井紗耶香は、今年のプッチモニの頃から、急激に可愛くなった。俺は、増員当初から、
市井のことは「将来、絶対可愛くなるで」と回りに言ってまわっていたし、だから、市井
が花開くように変わっていったのを見て「ほら見てみい」と心の中で自慢したものだ。

市井は、今でも、再デビューを目標に、トレーニングに励んでいるし、俺も、出来る限り
協力してやりたいと思っている。

当然、市井とは定期的に連絡を取り合っているし(これは秘密だが、和田ともこの件については何度か話し合いをしている)呼び出せば、後藤と会わせることも可能だろう。

(よし、今夜にも、市井とコンタクトとらんとな)


15 :いちごま−1:2000/10/25(水) 23:17

ブースから外を見ると、矢口が中澤にちょっかいを出している。中澤は迷惑そうだが、
矢口が離れると、淋しそうな表情になるのが笑ってしまう。

曲を必死で覚えようとしているらしい吉澤には、石川がまとわりついている。こっちは、
吉澤は本気で迷惑顔だ。

(ホンマ、今までよう気付かんかったけど<モーニング娘。>の中は Love Paradise
やってんなあ)

俺はニヤニヤ笑いながら、彼女たちを眺めていた。


16 :申魔法楽団:2000/10/25(水) 23:17
今日はここまで。

17 :名無し娘。:2000/10/26(木) 00:02
ほぜんさげ

18 :名無し娘。:2000/10/26(木) 00:04
念のため日付変更sage

19 :名無し:2000/10/26(木) 01:06
こんなつんくは嫌だと思いつつ、生のやぐちゅーが
見れるならこんなつんくになりたいと思う。
……鬱になるが正直な感想。

20 :名無し娘。:2000/10/26(木) 03:15
ほい

21 :名無し娘。:2000/10/26(木) 03:46
市井と会えるつんくと和田がまじうらやましくおもえる俺市井ヲタ


22 :名無し娘。:2000/10/26(木) 06:08
もういちごまはいいよ・・・

23 :名無し娘。:2000/10/26(木) 14:33
ほ〜い

24 :名無し娘。:2000/10/26(木) 23:16
テレホsage

25 :申魔法楽団:2000/10/26(木) 23:44

今日の更新はありません。

電波挿入バージョン『小説「新・LOVE論」第2章』
http://www.geocities.com/monkeymagicjp/file/lovedenpa.html
もしくは『官能小説「弱そうな新・LOVE論が噛んだ小指が痛い」第2章』

もう余りにも手が入りすぎて、訳が分からない。っていうか、私の書いたヤツよりも
妙に面白くて口惜しいような気もする。


26 :名無し娘。:2000/10/27(金) 00:29
>>25 それモ板にあったん?

27 :名無し娘。:2000/10/27(金) 02:53
スレ増殖警報発動sage

28 :大阪府和泉市光明台:2000/10/27(金) 03:14
まんせー

29 :名無し娘。:2000/10/27(金) 06:12
>>28
この程度の荒らしなら保全協力ありがとうと言いたくなる(w

30 :名無し娘。:2000/10/27(金) 08:04
中川官房長官辞任sage

31 :名無し娘。:2000/10/27(金) 11:29
またまたスキャンダル巨人sage

32 :名無し娘。:2000/10/27(金) 20:33
ほぜ〜んsage sage

33 :名無し:2000/10/27(金) 21:16
25のやつって
ttp://www02.so-net.ne.jp/~saitou/denpa.htm
ここで変換して
ちょっと手を加えただけっぽいね


34 :名無し娘。:2000/10/28(土) 00:03
日付変更sage

35 :申魔法楽団:2000/10/28(土) 00:29
>>33
そこ通すと、なんか面白いでしょ?

36 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:30

「どもっ、市井です。つんくさん、お久しぶりでっす」
市井は、いつ会っても、快活で気持ちいい。
あの、おどおどしていた最初の頃と比べて、プッチ以降の彼女の変わり様には驚かされ
っぱなしだった。

市井は、お茶を運んできた事務所のバイトの女の子と、二言三言、親しげに話をしている。
「なあ、市井。あの子と、友だちなんか?」
うーん、と市井は首をひねって、
「ここに来た時にしか、まだ話したことないですけど……楽しい子ですよ」
休みが合ったら、遊びに行こう、とは言ってるんですけどね、と笑いながら付け加える。


37 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:31

市井は、昔っから<モーニング娘。>の中では、一番スタッフ受けが良かった。これは
大事なことだ。「仕事は人とのつながりからしか生まれへん」ってのが、俺の持論だ。
将来、市井は自分の力で、女優でもモデルでもやっていけるだろう。カワイイだけでは
やっていけないってのも、芸能界の一面なのだ。

「最近、どや。順調か」
「まあまあ、ですね」
俺は、頭を切り替えて、市井とマネージャーとの三人で、打ち合わせを行った。――申し
訳ないが、ここから先の小一時間ばかりの話の内容については、まだ書く訳にはいかない。
来年以降の戦略を含んでいるし、まだ各所に筋さえ通していない、実現するかどうかも不
確実な情報ばかりだから。

(まあ、今回の話とは関係あらへんしな)


38 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:33

「じゃあ、この件については、今日はこの辺までやな」
「そうですね。お疲れさまでした」

腰を浮かしかけた市井に、
「まあそう慌てんと、コーヒーでも飲んでったらええやん」
はあ、と市井は座り直した。

俺は、事務所の女の子にコーヒーを三つ頼み、さて、と気を引き締めた。
(今日の本題はここからやで)


39 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:34

「今後の再デビューとは別の話で、や」
「?」
「CM、撮る気あらへんか? 後藤と二人で」
俺は『後藤』の名を出した瞬間の市井の反応をスルドク観察した。

きょとん、というのが、一番正しい描写だった。
(喜びと戸惑いと驚きの、愛憎ないまぜになった複雑な表情、といえなくもない──けどな)

「私を、使うんですか?」
「イロイロとまだクリア出来てない問題はあるから……そやな、唇だけの出演になる、かな」
「唇だけ、ですか? どんなCMになるんですか?」
……どう切り出したものか。俺は腕を組んで、ううむ、と考え込んだ。
市井も黙り込んだ。
気まずい沈黙だ。


40 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:40

(気分をほぐすために、軽い話題でも振るか)
「ほら、昔な、ウィークリーマンション借りて、プッチでミニ合宿やったやろ?」
「……はい。圭ちゃんと後藤の三人で、しましたね。私、途中で熱だしてリタイア
しちゃったんですけど」

「合宿の2日目の朝や。保田と市井が先に起きて、朝食の準備に取りかかった」
「? そうでした、ね」
「あの時、映像やと、夜は市井が寝ていたハズの場所に、朝、後藤が寝とったんや」
「え――そうでしたっけ?」
「あの晩、一体、何があったんや!!」
俺は、ガタン、とイスを蹴って、立ち上がっていた。


41 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:41

「……つんくさん、大丈夫ですか?」
テーブルに身を乗り出した俺に、マネージャーが割り込んできた。
「最近、つんくさん疲れてるんです。市井さん、すいません。今日はこれまで、ということで」
「ちょっと待てや。5月15日のプッチモニダイバーの、後藤の号泣や。普通、お別れ程度
で鼻水垂れ流して泣くか? どうやねん! あ、コラ、マネージャー――まだ話は終わって
ヘンっちゅーねん」
俺は引きずられるように、その場から移動させられた。

(くそ、なかなか現実は思うとおりにならへん)
夏まゆみからも、中澤と矢口のキスシーンなんていう扇情的な振り付けは出来ない、とダメ
だしされ、俺はふてくされた。


42 :いちごま−1:2000/10/28(土) 00:44

俺は「休暇をとってください」と半ば軟禁に近い状態で、3日間、自宅に閉じこめられた。
単なる疲労で片づけようとした事務所のこの処置は、むしろ逆効果だった、と言えるだろう。
俺は、現実をコントロール仕切れなかった敗北感に打ちのめされながら、<モーニング娘。>
小説をじっくりと読み直した。

まるで「自分自身を洗脳するつもりかい!?」ってイキオイで。


43 :申魔法楽団:2000/10/28(土) 00:45
続く……

44 :名無し娘。:2000/10/28(土) 02:58

「合宿の2日目の朝や。保田と市井が先に起きて、朝食の準備に取りかかった」
>「? そうでした、ね」
>「あの時、映像やと、夜は市井が寝ていたハズの場所に、朝、後藤が寝とったんや」
>「え――そうでしたっけ?」
>「あの晩、一体、何があったんや!!」

つんくさん、よくぞ聞いてくれました!!


45 :名無し娘。:2000/10/28(土) 08:15
保全です

46 :名無し娘。:2000/10/28(土) 15:42
こちらも保全です

47 :名無し娘。:2000/10/28(土) 18:31
このスレッドは鯖移転の際、nattoへは移転しなかったようだ。
今後の対策としては
1:このままageてもagaらない過去スレ一覧にも出ない状態で続行する
2:natto鯖で立て直し
以上2つの方法がある。

48 :名無し娘。:2000/10/28(土) 18:48
名作集に帰るのもありだぞ。

49 :名無し娘。:2000/10/28(土) 22:32
帰るって? 申魔法楽団って名作集の人だったの?

50 :名無し娘。:2000/10/28(土) 22:36
>>49 娘。だヨ! 全員集合で暴露されてたじゃん。露骨じゃないけど…
この内容は、俺も名作集向けだと思うなぁ……

51 :名無し娘。:2000/10/28(土) 22:51
いや、でも今作は面白いぞ。個人的には全員集合より好きだな。
たとえ何処に移動しても追っかけて読むぞ。

52 :名無し娘。:2000/10/30(月) 08:38
age

53 :名無し娘。:2000/10/30(月) 15:36
このまま2chでやってほしい。

54 :保田記念日:2000/10/31(火) 07:26
更新できないのは仕方ないので、
とりあえず今後の方針を示して欲しい。

55 :申魔法楽団:2000/10/31(火) 12:58
保田記念日さま、
放置気味で申し訳ない。

消されてしまうまでは、sakiで(つまりこのスレで)続けていきます。
私が更新してないのは、まったく私的な理由からです。単に続きをまだ
書いてない、だけなのですが。

mentai時代の小説のスレが(私が書いたヤツではないのですが)まだ残っていたり
もするので、ここも、息長く続けてゆけるのではないか、と思っております。
(希望的観測)

56 :保田記念日:2000/11/01(水) 01:12
ご丁寧にありがとうございます。
急かしているわけではないのでどうぞごゆっくり。
今後も期待しています。

57 :転調:2000/11/02(木) 01:59

「つんくが失踪したって?」
シャ乱Q時代からの付き合いのある和田が、マネージャーに呼ばれ、彼の部屋に駆けつけ
たのは、つんくが強制休養をとらされてから、四日後のことだった。

「つんくさん、最近言動がおかしくて、それで、社長命令で、3日間の休養をとってもら
うことになったんです」

マネージャーは、動転しているようすで、なかなか話の全容がつかめなかったが、和田は、
辛抱強く、彼の話を聞いていた。


58 :転調:2000/11/02(木) 02:00

「3日目の晩、明日の仕事について打ち合わせの電話を入れたんです。そしたら、留守電
にしかつながらないんで、おかしいって思って、急いでマンションに来たら、もうもぬけ
のカラだったんです」

和田は、点滅している留守電のスイッチを入れた。
何件か、つんくの消息を問い合わせる伝言が入っていたが、それよりも、異常だったのは、
つんくの応答メッセージだった。

『(BGM:ダースベーダーのテーマ)おう、オレや。つんくや。オレがいなくなっても、
探さないで下さい。落ち込んだりもしたけど、すべての原因は保田です。わははははは』

ピー(留守録スタートの音)


59 :転調:2000/11/02(木) 02:00

「……なんだ、これ?」
「さ、さあ」
和田の問いに、マネージャーは、おどおどと返事した。

ふと思いついて、和田は、机の上ノートパソコンの電源を入れた。
デスクトップにショートカットが張り付けられていたワープロソフトを起動させる。最新
履歴のファィルを開く。

『新・LOVE論』

と表題には書かれてある。


60 :転調:2000/11/02(木) 02:01

内容を読み進めているうちに、和田の眉間にシワが寄ってきた。

「なあ、この前撮った、グリコのCMな」
「はい」
「あれ、中澤と矢口が、両側からポッキーを食べていくシーンあっただろ? あれ、つんく
からの強い指示があったみたいなんだ。まあ、面白いアイデアだとは思ったけど……、
一般的はヒクわな。だから、一瞬のシーンでしか、使わなかったんだけど。バックグラウンドに、
こんなことがあった、とはね……」

ほら、つんくを探すぞ、と、和田は、まだ若いマネージャーの背を叩き、先に部屋を出た。
慌てた様子で、マネージャーも後に続く。


61 :転調:2000/11/02(木) 02:01

ばたん、と扉は閉まり、部屋は無人となった。
──と思われた。

(いなくなったフリをして、実は同じ場所におる、ってのは基本なんやけどな……)
2人が出ていった後の部屋内に小さく響いた、そのつぶやき声を聞いた者はいない。


62 :申魔法楽団:2000/11/02(木) 02:03

……。
まあ、いろいろあって、転調します。

第2部『新・LOVE論〜激闘編〜』スタート!


63 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:04

(ああ、今日も疲れたなあ)
中澤は、目をしばたたかせながら、自分のマンションに戻った。カラーコンタクトを外す
チャンスが無かったのだ。
(あんまし目には良くないみたいやから、早いこと外しとかんとな)

玄関を開ける。
と同時に、凍り付いた。


64 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:07

ピッ
『キャシーです。今日は、お疲れまでした。明日の予定ですが、特に変更はありません。迎えに行く前に、電話を入れます』
「これは削除、っと」

ピッ
『みっちゃんやで。今度の日曜な、休みらしいやんか。遊んでえな。ウチ友だち、おらへ
んねん。電話待ってるで』
「即削除やな」

ピッ
『こら〜、裕子ッ! まだ帰ってないってど〜いうこと? 可愛い矢口は、待ちくたびれ
たんで、もう寝ます。じゃあね!』
「おお」

つんくの顔が、ぱあっ、と輝いた。


65 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:08

「ぱあっ、とちゃうわッ」

中澤は、つい関西ノリで、つんくの頭をはたいてしまった。

「いや、やぐちゅー健在や、思てな、つい嬉しくなったんや」
「って、つんくさん、どうしてここにいますの? 和田さんから連絡ありましたよ、
いなくなった、って」
「いなくなった、って、オレ、ここにおるやん」
「そういう問題じゃなくて──」


66 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:08

つんくは、ぽん、と手を打って、
「ああ、どうやって入ったか、か? 簡単やで。管理人に言うてな『オレは、モーニング
娘。の生みの親や。親が子の心配して何が悪いねん!』って丁寧に説明したら、分かって
くれたわ。最終的には、鍵を貸してくれたで」

中澤は、引っ越しの誘惑にかられた。
「とりあえず、和田さんに連絡を……」

つんくは、ぱん、ぱん、と手拍子を始めた。

「え? なんですのん」


67 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:09

 裕ちゃん 裕ちゃん

 そんなに 見つめ ないでよ

 恥ずかしいじゃない


「矢口の『私と裕ちゃん』って題のラップや。10月19日の今夜も満開で、最初に発表
された」

中澤は、それ自体は知っていた。だが、その歌詞の内容を改めて聞くと、なんだか顔が赤
くなってきた。


68 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:09

「最初に発表、って──」
「TSUNAGIのデビュー曲に使お、思てな。矢口のソロパート部分で」
「使わんでええ!」

中澤は、つい、つんくに蹴りを入れてしまった。

「ええか、つんくさん、そこから動きなや。今から、和田さんに連絡とるからな」
つんくをびし、と指差して、中澤は怒鳴った。

「はい、もしもし、中澤です。和田さん? ええ、つんくさん、今、ここにいます。あ、
こら、逃げるな──ちょっと〜、誰かぁ(電話の子機を持ったまま、玄関から外に出る)
その人、痴漢です〜〜捕まえて〜〜〜」


69 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:10

        ◇

「ええか、石川」
「はい」
「お前は、吉澤と、運命の糸で結ばれてるねん」
「ええっ、やっぱり、そうだったんですか!?」

「そうや。よう分かってるやないか。でもな、実際の吉澤は、後藤や保田に、心揺れたり
しとる。──パッシモニの第一回で、ジャガバター、後藤は吉澤に食わしとったやろ?
 あんなんは、アカンのや。オレは、個人的に、よしごま反対派やからな。ここは、石川
の色気で、吉澤をつなぎ止めんとな」


70 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:10

「……私の、色気、ですか? よく分かりません」
「ええねんええねん。ただ、これだけは覚えておいて欲しい。オレは、いつでも、いしよしを
応援してるからな」

「はい。結局、よく分かりませんけど。……あの、つんくさん?」
「おう、なんや」
「どうして、頭に包帯巻いてるんですか?」
「ああ、気にせんといて。ちょっとした心の行き違いでな。まあ、たいしたことはあらへ
ん。5針ほど縫っただけや」


71 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:11

楽屋の扉が、がちゃりと開き、中澤が顔を出した。

「つんくさん、石川に妙なコト、吹き込まんといて下さいよ」
「ちっ、中澤か。あいつ、矢口に愛されとるのに、いろんなメンバーに手を出す浮気者や。
しゃーないなあ」
「誰が浮気者ですかッ」
「さらばっ」

つんくは、楽屋の窓から、ひらりと身を踊らせた。


72 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:11

石川が、ひっ、と声をあげる。
「ここ、三階ですよ……」
「最近のつんくさんは、なんか常識から外れつつあるねん──」
つかつかと、中澤は窓まで歩き、下を見る。
つんくのオープンカーが、低くエンジン音をあげ、走り去ってゆくところだった。


73 :やぐちゅー2:2000/11/02(木) 02:12

あれでも、ちゃんと仕事はしているという。
(つんくさん、いつ寝てるんやろ?)
ふと、窓べりを見ると、『TSUNKU』とデザインされたカードが置いてあった。
そこには走り書きで「やぐちゅー計画、着々と進行中」とあった。
裏を見ると(いしよしもあるよ!)と書かれてあった。芸が細かい。

中澤は、深く、ため息をついた。


74 :申魔法楽団:2000/11/02(木) 02:12
続く。

75 :名無し娘。:2000/11/02(木) 03:00
このまま暴走か、つんく?
面白いので作者さん頑張ってくだせい。

76 :名無し娘。:2000/11/02(木) 03:11
このままつんく一人からまわりすると面白いんだが……どこに逝く気だ作者は?

77 :名無しさん@1周年:2000/11/02(木) 03:30
このパターンで逝くとUKもK1もないな・・・。保田の未来はどっちだ?

78 :ひよこ名無しさん:2000/11/03(金) 03:48
壊れてて汚もろい。

79 :名無し娘。:2000/11/03(金) 16:39
>>77
登場しないんじゃ……

80 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:15

吉澤は、心細げに、辺りを見回した。

「なんなのよ、ここ……」
確かに、タクシーに乗って、家までの住所を告げたハズなのだ。なのに、目覚めたら、
タクシーは明かり一つない、どこか薄暗い場所に止まっていた。
「起きたか──降りろ」
タクシーを囲むように、複数の、男の気配がする。
異常事態だ、ってことは分かってはいたが、従わない訳にもいかなそうだった。


81 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:15

吉澤は、渋々、後部座席から、車外に出た。
海の匂いがした。
暗闇に目が慣れてきた。港の廃倉庫、といったところか。
見知らぬ男たちにうながされ、吉澤は怯えながら歩かされる。

(何が起こってるんだろう……これから、私、どうなっちゃうんだろう……)

女の子として、最悪のパターンを脳裏に思い浮かべ、吉澤は生きた心地がしなかった。


82 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:16

真っ暗な、倉庫の中に連れていかれる。
この男たちは、当然、彼女が、モーニング娘。の吉澤ひとみだ、ってことは百も承知な
のだろう。

ばん、と照明がついた。
吉澤は、しばらくの間、目が眩んで、何も見えなかった。
「俺のアジトによう来たな」
バンダナを巻き、サングラスをかけた、怪しげな男が中央に立っていた。

「つんくさん? どうして、こんなところに」

驚きと安堵が入り交じった声で、吉澤は言った。


83 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:16

「つんくとちゃうで。オレは、悪徳プロモーター、ミスターX(エックス)や」
「……はあ」

途端に、携帯が鳴った。
「おう、なんや」
重々しく、ミスターXは電話に出た。
「あっ、はい、はい。ええ『つんくちゃん』の件ですね……もう明日までに、きちんと
仕上げますんで、はい、はい」

ミスターXは、ペコペコと受話器片手にお辞儀しながら、身振り手振りで、吉澤に、脇に
置かれた小さな応接セットに座って待っているように、指示した。
吉澤はハンカチでソファのホコリを払って、座った。
さっきの、見知らぬ男の1人が、お茶を入れてくれた。


84 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:16

ようやく電話の終わったミスターXは、吉澤に向かい合わせに座った。

「今日、ここに来てもらったのはほかでもあらへん。石川についてやねん」
「梨華っちが、どうかしたんですか」
「石川は、18禁のアダルトビデオに出ることになった」
ぶー、と、吉澤は、お茶を吹いた。
お約束だが、ミスターXは、まともにお茶をかぶった。ちょっと待て、と、顔をそむけて、
サングラスを外し、タオルで拭いていた。


85 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:17

「っていうかやな、連れ去られた、ってのが正解やな。まあ、ぶっちゃけて言えば、
暴力団の若いのに誘拐されてしもうてん。さっき、連絡あってな。アダルト男優との
本番をビデオに撮って、裏で流通させるらしいわ」

吉澤は、のんびりと話すつんくとは対照的に、オロオロと、立ったり座ったりした。
そんなことを聞かされても、どうしていいか分からない。

「そこで、吉澤の登場や」
「どうしてそうなるんですか!?」
吉澤は、つい、大声を出してしまった。


86 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:17

「そんなん、お姫さまの危機には、王子さまが助けに来るって決まってるやんか。それで
こそ、いしよしちゅーても過言ではない」
「──」
吉澤は、絶句した。何かがおかしい。根本的に間違っている。

「王子さまのキスで、眠り姫は目を覚まして、めでたしめでたしや」
しかも、お伽噺の内容も、なんか違う。
(確かに、最近のつんくさんはおかしいとは思っていたけど、これじゃあ、メチャクチャだ)
吉澤は、自分の携帯を取り出した。


87 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:17

「そんなの、すぐに警察に連絡するべきです。今から、110番します」
「事態は、そう簡単やない。これを見てくれ」
ミスターXは、サングラスを取り去った。
「驚かせて悪かったな。悪徳プロモーター、ミスターXの正体は、俺──元シャ乱Qの
つんくやってん」

つんくの好奇心に満ちた表情は、吉澤がどれくらい驚愕の反応を返してくるのか、探って
いるようでもあった。
それはもう知ってるから、と吉澤は言いかけて、ガマンした。


88 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:18

それほど、吉澤は反応しなかったので、少し残念そうに、つんくは続けた。
「全部な、作り話やってん。暴力団の若いのを金で雇ってな、石川にもこれは芝居やから、
って言ってきかせて、で、何も知らない吉澤に大活躍してもらうつもりやった」

そこまでの話だけでも、ツッコミどころ満載だったが、吉澤は先を促した。

「──やった、って、どういうことですか?」
「それがな、俺が渡した金よりも、実際にアダルトビデオ作った方が、はるかに儲かる、
って気付いたんやろな。三文芝居には付き合えない、あとはこっちで、芝居を本当にして
やる、っていうて来よった」


89 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:18

「それじゃあ、なおさら、警察ですよ」
「黒幕が俺やってバレるやんか。そんな恥ずかしいこと出来へん。で、や。ここは、当初
の計画どおり、吉澤に、石川を助けて貰うことにした」
「貰うことにした……って……」

「でもな、そりゃあ、吉澤も女の子や。王子さま、ってのは設定にムリがある。そやから、
ここは、正義の味方吉澤とヒロイン石川、ってシナリオにチェンジすることにしてん」

つんくの世迷い事に付き合うのは、ここまでだ。吉澤は、携帯のボタンを押した。


90 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:18

と、横から伸びてきた手が、吉澤から携帯を奪った。
「あっ、なにを」
地面に携帯は叩き付けられ、カバーが割れてしまった。

「その暴力団、ってのが、こいつらや」
つんくは、両手を上げて言った。
「吉澤を呼びだした後で、こいつらの裏切りが分かってん。スマンな」
吉澤は、後ろ手に縛られてしまった。
つんくは、男だから、というのもあるのだろう、床に顔を押しつけるように倒されて、
腕をねじり上げる格好で、縛り上げられていた。


91 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:18

幌のあるトラックの荷台に、縛られたまま乗せられた。二人とも、事務所に連れていかれ
るらしい。

若い組員が1人、見張りとしてだろう、荷台に乗っている。だが、しばらくすると、居眠
りを始めた。
二人とも縛られているし、どちらも芸能人だ、ということもあって、油断しているのだろう。

(おい、吉澤。お前、両手は動くやろ?)

え、と振り向きかけた吉澤に、つんくは前を見たままで聞いてくれ、と鋭く言った。
実は、吉澤は女の子、ということもあるのだろうか、かなり、緩めに縛られていたのだ。
少しムリして引っ張ると、両腕は自由になった。


92 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:19

(よし、エエで。……ちょっと待っててな)
つんくはゴソゴソと、身体をねじり、布に包まれた何かをゴトン、と落とした。
正義の味方には、必殺の武器が必要や。コレを持っとき、と、つんくはささやく。
(あの、つんくさん、これは──)
するすると布をほどく。中から出てきたのは、

(相手は、暴力団やからな。こんなこともあろうかと、四方八方に手を尽くして、入手
しておいた)
「必殺、ってピストルじゃないですか! こんなの使ったら、相手が死んじゃいます」

声が大きくなった吉澤に、しっ、とつんくは、小声でいさめた。

(月光仮面も、武器は拳銃やってんで。エエやん。吉澤が使える必殺技ゆうたら、これ
くらいしかないやろ。弾は、六発、入ってるからな)


93 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:19

「いりません。返します」
「……そうはいかんのや」

つんくは、ぱちぱちと瞬きした。
「やっぱり、男は、警戒されるんやろな。さっき、妙な注射打たれてん。このカンジやと、
睡眠薬やな。……俺は、ここまでや。石川を、助けたってや」
「ちょっと、つんくさん」
つんくは、ごつん、と床に頭を打ち付けるようにして倒れた。そのまま、寝息を立てて、
眠り込んでしまった。


94 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:19

びくっ、と、見張りの男が目覚める。
吉澤は自由になった手と──拳銃が、相手には見えないように、とっさに両手を後ろに
持っていった。

「どうした?」

吉澤は、組員に身体の正面を向けている。背中に回した右手には、拳銃が握られている。

「つんくさんが、気絶しちゃったんです」
「ああ、それは睡眠薬だ。気にするな」


95 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:20

男は、ふわぁ、とのびをして、もう眠ろうとはしなかった。吉澤は、男に見つからないよう
苦労して、拳銃を服の中に隠し、ハタからは縛られているように見える様、ヒモの中に両腕を
通した。

トラックは長い間走った。砂利道に入り、十分ほどして、停止した。
「降りろ」
外から、声がする。見張りの男は、つんくを引きずるように立たせ、吉澤には付いてくる
よう指示した。

トラックを降りたところで、つんくは両脇を支えられるようにして、先にどこかへ連れて
いかれていった。


96 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:20

「お前はこっちだ。友だちに会わせてやる」

プレハブの建物に向かう。ここに、AV撮影されることになった石川がいるのだろう。
もしかしたら、もうすべては終わったあとなのかも知れない。なら、次は、私の番だ。
脇の下の拳銃の感触が、リアルに感じられる。どうして、こんなことになってしまったん
だろう。昨日まで、普通に芸能人していたのに。

(もうすぐ朝、かな)

まだ薄暗い空を見上げ、現実感を喪失した頭で、ぼんやりと吉澤は考えた。


97 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:20

殺風景な部屋だった。
よくテレビ局で見る、暴力団の事務所のセットとまったく同じだ。
壁には提灯がいっぱいぶら下がっていて、任侠、と書かれた掛け軸なんかがあったりする。

「ここで、待ってろ。もうすぐ、撮影が終わるからな」
男は、ニヤニヤ笑いながら言った。イヤらしげに、吉澤の身体を見ているような気がした。

(どうしよう。急がないと、取り返しのつかないことになっちゃうよ)

だが、チャンスは向こうからやってきた。
まったく監視がゆるいというか、男は、コーヒーでも飲むか? とかいいながら、奥へ行って
しまったのだ。


98 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:21

部屋の中は、吉澤1人になった。
早速、腕を通していただけの戒めをほどき、脇の下で暖かくなっている拳銃を出した。
ここに、捨てて行こうかとも思ったが、脅しに使うくらいの使い道はあるでしょ、と、
右手に握った。

あらためて、それをまじまじと見つめる。想像していたものとは違って、軽く、とても人
を殺せる道具のようには思えなかった。

(私、緊張してるんだな)

多分、普段の感覚とは、もう違ってしまっているんだ。

大きく息を吸い込んで、扉に向かう。
鍵はかかってなくて、すんなりと空いた。


99 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:21

その向こうには、上半身ハダカの男が1人と、部屋の隅で、丸くなって震えている石川の
姿があった。

「吉澤さん」
「梨華っち!」

これが、逆上する、ってことなんだろう。
吉澤は、なんの躊躇もなく、男に向かって、引き金を引いた。頭の中は真っ白だった。
でも、冷静に、撃った弾の数はかぞえていた。

(一発、二発、三発……)

四発撃ったトコロで、石川の悲鳴が耳に届いて、我に返った。


100 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:21

男は、腹と胸を、べっとりとした赤い液体で染めて、動かなくなっていた。

「吉澤さんッ」

石川は、まだ茫然と立っている吉澤に抱きついた。

「……私、殺しちゃったのかな?」

石川が、吉澤の頭を抱えるように、泣きじゃくっている。(大丈夫、大丈夫だよ)と、
吉澤の耳元でつぶやき続けている。

「あ、梨華っちこそ、大丈夫だった? 怖くなかった? 何もされてない?」
「怖くないよ。何もされてないよ」
「良かった」


101 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:21

多分、すべてが終わってしまった後だったとしても、良かった、と言っただろう。こうして、
再会できたんだから。それ以外、望むものなんてないよ。

扉の向こうが、騒がしくなってきた。
そりゃそうだよね、拳銃の音もしたし、多分、この人も死んじゃったし。

(私たちも、殺されるのかな。こんなことになっちゃったんだから)

どうにかして、どちらか1人だけでも──いや、石川だけでも、無事に、逃げ出させる
ことは出来ないだろうか。
吉澤は、血まみれで、ぴくりとも動かない男のそばにしゃがみこんだ。身体を探る。吉澤
が持っているのと、同じ型の拳銃を見つけた。


102 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:22

「梨華っちも、これ持ってて」
「え……私はいいよ」
「撃たなくてもいいから。脅しにも使えるから」

拳銃の柄の方を、石川に突き出す。
その時、わずかに感じた違和感。

(……?)
(何か、おかしい)
考えろ、もっとよく考えるんだ。
それは、とても重大なことのような気がした。
それこそ、この状況を、一気にひっくり返せる、って思えるくらいの。


103 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:22

ただ、その感覚を深く追求する前に、
扉が、ゆっくりと開いた。
銃や刃物をもった男たちがぞろりと並んでいた。
盾にするのか、それとも、人質なのか、ぐったりとしたつんくが、真っ正面に、引きずり
出されている。
これでは、どうしようもない。

(銃弾は、あと2発)
それと、死んだ組員から奪った拳銃。

「梨華っち、もし、ここで二人とも──つんくさんも入れたら、三人か──死んじゃったら、
私のせいだよね。ゴメンね」


104 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:23

私、嬉しかったよ。
吉澤さんと──ひとみちゃんと一緒なら、私、ここで死んでもいいよ。

石川は、そう言って、ぎゅっ、とおでこを押しつけてきた。どうやら、本気で言ってるらしい。

(可愛いじゃんか。なんか、じーん、ってなるね)
これじゃあまるで、本当に、つんくさんが言ってたみた、ヒーローとヒロインみたいだ。
これで、私が男だったら、抱き締めて唇の一つも奪っちゃうんだけど。


105 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:23

そんなことを吉澤は考えていた。
石川の唇を見ていた。

石川は──

「キス、したいの?」

ぶるぶるぶるぶる。
激しく首を振る吉澤。


106 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:23

石川は、残念そうな顔をした。
「ええと、じゃあ、それはこれが終わったら、ということで」
しどろもどろに、吉澤は言った。
(なんで、こんな時に色気を発散出来るんだよ)
あまりにも石川らしくて、それで、少しだけ、リラックス出来た。

今、左腕は、石川の腰に回している。
右手には、つんくから受け取った拳銃が握られている。

軽く、右手を振ってみる。

(おかしい。おかしいぞ)

脳裏に、ひらめくものがあった。
突き上げるように、膨大な熱量込みの怒りがこみ上げられてきた。


107 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:23

(もしかして……いや、まさか……でも)

ぶるぶると身体が震えだしてきた。石川は、不安そうに、こちらの顔を覗き込んでいる。

(もし、私の、考えが間違っていれば、ここで、3人とも、死ぬだろう)

「梨華の命さ、私が預かっていいかな」
「いいよ、ひとみちゃんに、全部あげる」


108 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:24

なんか、勇気が出る。
吉澤は、石川の肩越しに、扉の前に並ぶ暴力団たちに、銃を向けた。
男たちは、ひるみもしなかった。

(いいさ)
吉澤は、引き金を引いた。

パン。

銃弾は、つんくの眉間に命中した。

額に、赤いバラを咲かせた。

(やっぱり)
予想は、確信に変わった。


109 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:24

吉澤は、今度は自分のこめかみに銃口を当てた。

「ひとみちゃんッ!」

石川の悲鳴。
軽い衝撃と、飛び散る鮮血。
いや、これは……ベタだが、トマトジュースだ。

この拳銃は、オモチャ。
そして、それで死んだフリをした組員も、当然、演技だ。それは、つまり、


110 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:24

「フフフ……よくぞ見破った、吉澤くん」
つんくは、顔面をトマトジュースで真っ赤に染め、両側を組員に支えられながら言った。
リアルにするために、本当に睡眠薬は打たれているようだ。微妙に、ろれつが回っていない。

「……なんで、その銃がニセモノだと気付いたんや?」
「そんなの──」

吉澤は極度の緊張から逃れた安堵感からか、どっ、と、全身から冷たい汗が吹き出るのを
感じていた。


111 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:25

「ううん、今は、それはいいです。つんくさん、どうして、こんなことを?」
吉澤の声に込められた殺気に、つんくは気付いていないようだった。
呑気に、ペラペラと喋った。

「なんで、って……『どっきり』やん。……ほら、その部屋には隠しカメラが満載やねん。
しっかし、いい絵が撮れたなあ、……12月のスターどっきりのネタは、寝起きから急遽、
今回のと差し替えや。日本全国に、二人の決死のラブシーンが放映されて……お茶の間に、
いしよしを一気に認知されるねん──」

吉澤は、つんくに最後まで話させなかった。

石川に持たせていた銃をひったくり、無言で、つんくの腹に銃口を向けた。


112 :いしよし−1:2000/11/04(土) 23:25

ぱん。
ぱん。
ぱん。


「誰だッ! 本物持ち出してきたのは!?」
「すんません。まぎれちゃって」
「……マジチャカと、ニセモノの違いに気付いたんか……やるやないか、吉澤……(ガクッ)」
「おーい、救急車だッ!」

この事故で、スターどっきりへの放送差し替えは、永久に不可となった。
つんくが2週間の入院で済んだのは、幸運としか言いようがない。


113 :申魔法楽団:2000/11/04(土) 23:25
続く。

114 :名無し娘。:2000/11/05(日) 01:31
やっぱ吉澤、怒ると怖いんだな……

115 :名無し娘。:2000/11/05(日) 03:25
作者さんの壊れ方最高っす。

116 :名無し娘。:2000/11/05(日) 06:04
キレたO型は怖いよな……

117 :名無し読者:2000/11/05(日) 06:52
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。

118 :名無し娘。:2000/11/05(日) 08:44
切れたO型は確かに怖いな。

119 :名無し娘。:2000/11/05(日) 14:26
まさか「いしよし」を書くとは・・・。(w

120 :名無し娘。:2000/11/05(日) 15:35
おもしれぇなこれ、やっぱり。
どんな終わりむかえるか想像もつかんな。

ところでこれってsageてる意味あるの?

121 :名無し娘。:2000/11/05(日) 17:32
>>120
http://saki.2ch.net/morning/subback.html
ageたらsubbackリストから消えるせいかもしれません。
http://saki.2ch.net/test/pageview.cgi?BBS=morning
あるいはこのリストに出てくるのをきらってのことかもしれません。

122 :名無し娘。:2000/11/05(日) 21:45
次の組み合わせはどうするんだろ?
定番は終わったし話の持っていき方を変えるのかな?
と呟いてみた

123 :log0076:2000/11/05(日) 23:59
続きが読みたいね。。。
あの頃を思い出すよ。

124 :プロローグ:2000/11/06(月) 23:23

歌舞伎町界隈の僻地に、ひっそりと建つ、うらぶれたストリップ場。
そのステージに、小柄な女の子が、ちょこん、と立っている。
視線は暗闇を不安げに漂っている。表情は、こわばりがちだ。

「へえ、こりゃあ、似てるやんか」
客席には、複数の男たち。
その中から、脳天気な声があがる。

丸いステージに、強烈なスポットライトが当たっているため、客席の様子は見て取れない。

「彼女は、十六才です。これなら、ミスターにも満足して頂けるかと思うのですが」
「うん、エエで、エエなあ。これなら、イケるわ。じゃあ、コレ、貰っていくで」
「ありがとうございます」


125 :プロローグ:2000/11/06(月) 23:24

客席から、一人の男がステージにあがる。
頭から、すっぽりと黒い頭巾のようなものをかぶっていて、顔全部を隠して
しまっている。
額の位置に、大きく赤で『X(エックス)』とプリントされている。
少女は、怯えたように、男から、一歩、後ずさった。

「心配せんでもエエで。あとは、このミスターXがうまいことやったるからな。
今日からは、俺が、親代わりや」
少女は、上目遣いで、こくり、とうなづく。

「今日から、お前の名まえは、矢口や。矢口真里やで」
「……ヤ・グ・チ・マ・リ」

少女は、その言葉の羅列を、噛みしめるように、復唱した。


126 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:24

つんくさんが緊急入院してから、3日が過ぎた。
まあ、<モーニング娘。>としての活動に、直接影響することはなかったけど、それでも
ミニモニのCD発売延期やらなんやらと、スケジュールの調整にてんやわんやで、深夜ま
での仕事が続いた。

(なんか最近、吉澤と石川、妙に仲がええねんなあ)
矢口が、熱を出して、5日ほど、休養をとっていた。そのせいで、ごっちんと遊ぶことが
多くなった。よっすぃとはどうしたん? って聞いても、ごっちんは、言葉を濁すだけだ。


127 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:25

「今日も、お疲れさーん」
自分のマンションに、ふらふらになってたどり着く。独り言の多い独身女ってヤだな、
とかなんとか思いながら、エレベータのボタンを押す。

右目のコンタクトがゴロゴロいっている。
早く外さんとな、と、私は鍵を取り出して、玄関のドアノブに手をかけ――デジャヴに襲
われた。
(……まさか、ね)


128 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:25

「よお、お帰り、中澤。今日は、カレーやで」

へなへなと、私は玄関に崩れ落ちた。
エプロンをつけたつんくさんが、出迎えてくれた。

「あ、中澤さん、先に頂いてます」

なぜか矢口もいて、すでにカレーを食べている。
なんなんだよこいつら??


129 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:26

「矢口がおなかすいた、いうからな、近くのファミレスでも良かったんやけど、それやっ
たらいっそ、俺の手料理、食ってもらお、思てな。ルーを入れる前に、タマネギを一時間
炒めた、つんく特製カレーやで」

マンションの管理人には、つんくさんが来ても、絶対に入れたらあかんで、と強く言って
おいたのに。

「つんくさん、どうして、部屋の中に入れたんですか?」
「ああ、ここの管理人、分からず屋やな。なんべん言うても、絶対に首を立てに振らへん
ねん。まあ、こんなこともあるか、思うて、この前の時に、合い鍵作ってたから良かった
ようなもののなあ」
今晩にでも、鍵屋に電話して、新しいのに取り替えてもらおう。


130 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:26

「で、今日はどうしたんですか。つんくさん、入院してる、って聞いたんですけど」
「まずは、こいつを紹介するわ。矢口、こっち来」
「はい」

ペーパーナプキンで口元をぬぐって、矢口がこっちに小走りで来た。
「ほら、自己紹介や」
「中澤さん、こんにちは」
ぺこり、と頭を下げる。
私は、イヤな違和感を感じた。
(中澤さん? 矢口がか?)


131 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:26

「矢口、何か悪いモンでも食べました? 少しの間、休養させるのことにした、ってマネ
ージャーが」
「ホンモノの矢口は、心身症やねん」

???

「芸能界に、拒否反応起こしかけてるねんな。ミニモニのことが、ショックやったみたいや」
「ミニモニのことって、増員が、ですか?」
「矢口は『ミニモニ』を大事にしてたからな。四人やとしても、違うユニット名がつくん
やったら、ある程度は納得出来たかも知れへんな」


132 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:27

おどおどと、私を見上げている矢口と目が合う。
(矢口……こんなちっちゃい身体で、そんなコト考えててんなあ)
挙動がおかしいのも、なんか感じていた違和感も、矢口が病気なら納得できる。

「じゃあ、つんくさんは、なんでその休養中の矢口を連れまわしてるんですか? 休ませ
たらんとアカンでしょう」
つんくさんは、目を細めて、私を見た。
「もう気づいてるやろ? こいつは、矢口やないって」
すっ、と血の気が引いた。


133 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:27

そう、気づいていた。頭で、ではなく、感覚として。
彼女は、そう、限りなく、矢口に似ているが、矢口そのものではなかった。
でも、私がショックだったのは、目の前の矢口がニセモノだったからではなくて、

ニセモノを用意したってことは、
彼女を、つんくさんは、使うつもりなのだ。

「そんなに、矢口は良くないんですか?」
「あっちの矢口には悪いけど、このままやと、もうお払い箱やな。これからは、2代目矢口
で行くことになるかもな」
「つんくさん、何言うてますのん!」
一気に頭に血がのぼりすぎて、くらくらと目眩がした。


134 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:27

「そんなごまかし、通用する訳ないじゃないですか! 矢口は、これまでモーニング娘。
で一生懸命、やって来てくれたんですよ、それを、ちょっと使えなくなったからって」

何故だか、涙がポロポロと流れた。

まあ、落ち着け、落ち着けや、とつんくさんは、私の肩を叩いた。
「悪かったな、言い過ぎたわ。……これは、一時的な処置や。矢口も、このままやったら、
完全に治る前に、仕事にかり出されることになる。こいつは、いわば影武者や。こいつが
頑張っていてくれてる間は、矢口はゆっくり休めるねん」


135 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:28

つんくさんが言うには、社長は、すぐにでも矢口を退院させて(入院するほど、矢口は悪
かったんだ)仕事に戻せ、と、主張しているらしい。

「でも……でも、そんなん、ホントにうまく行くんですか? ファンの子たちを、ごまか
せるんですかねえ?」
まだ、鼻をすすりながら、私は言った。

「上手くいくもなにも、安倍なんてもう3代目――」
言いかけて、つんくさんは言葉を止めた。
「はあ?」


136 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:28

「いやいや、なんでもあらへん。おおっ、もうこんな時間や」
つんくさんは、わざとらしく、手元の時計に目をやった。

「あと一時間後に、太股に入ったままの銃弾摘出手術やねん。一昨日、腹の弾はもう出し
てんけどな。そろそろ、病院でも騒ぎになるころや。もうこれで俺帰るわ」
「弾? そういえば、つんくさんも、最低2週間は入院や、聞きましたよ。ロケット花火
で、空を飛ぼうとして、大やけどを負った、って」

「なんで俺が、そんなB21スペシャルみたいなことせなあかんねん」
「それはまあ、そうですけど」
でも、そう言いながら、つんくさんは、小声で(それは面白そうやなあ)とつぶやいていた。


137 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:29

「とにかくやな、このことを知ってるのは、中澤と社長とマネージャーと俺の、四人だけ
や。この、新しい矢口の面倒は、中澤に頼むわ。俺はまたしばらく、病院から出られんく
なるやろからな」

では、さらば、と叫んで、つんくさんは窓に走り寄った。
「ここ、12階ですよ」
つんくさんは、窓から下を見て、次に私の顔を見た。玄関から、おじゃましましたー、と
言って、出ていった。


138 :やぐちゅー3:2000/11/06(月) 23:29

ぽつん、と、二人、部屋に残されてしまった。
ニセ矢口と目が合う。
にっ、と笑って見せると、露骨に怯えたような表情になり、視線をそらした。

(なんや、可愛いないなあ)

こんな感じで、奇妙な二人暮らしは始まったのだった。


139 :申魔法楽団:2000/11/06(月) 23:30
続く。

140 :名無し娘。:2000/11/07(火) 00:44
そっか。安倍と矢口は(略

141 :名無し娘。:2000/11/07(火) 01:45
妙にというか、まんまと仲良しになったいしよしの
その後も気になる……。

142 :名無し娘。:2000/11/07(火) 03:34
はて、なんでごっちんは言葉をにごすんだろ?

143 :名無し娘。:2000/11/07(火) 05:22
筒井と浅田を混ぜたらこうなるのかな

144 :名無し読者:2000/11/07(火) 06:21
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。

145 :名無し娘。:2000/11/07(火) 06:49
暴走系なのに妙に納得

146 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:08

「ただいま、戻りました。心配かけて、ごめんなさい」
ニセ矢口は、楽屋で、みんなに元気に挨拶した。
「わあ、ホントに心配したよ。もう大丈夫なの?」
「はい」
「矢口さんのいないあいだ、一生懸命がんばりました」
「ありがとうね」


147 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:08

そつなく娘。たちとの再会を喜ぶ(フリをしている)ニセ矢口を、私は複雑な思いで見て
いた。彼女自体は、悪い子ではないんだけど。
私も、メンバーたちをだましているんだ、と思うと、胸がチクリと痛んだ。

「まだな、矢口は本調子じゃあないねん。今日は、一日見学、てことで、しばらくは調子
戻るまで、みんなにも迷惑かけると思うけど、かんべんな。矢口も、早くカン取り戻すね
んで」
「はい、中澤さん」
(中澤さん――か)
裕ちゃん、って呼んでくれていた頃の矢口が懐かしい。時には、裕子! って呼び捨てに
してたこともあった。それが、本当は、とても嬉しかったんだけど。


148 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:09

楽屋では、いつも二人でじゃれていたんだけど、今の矢口には、なっちやごっちんの方が
話題や感覚が合うようだ。そりゃそうに決まってる。向こうの方が、歳も近いんだし、テ
ンションも似ているのだろう。特に、ニセ矢口は、なっちがお気に入りのようだ。

(矢口は、ウチに合わせてくれてたんやろなあ)

「裕ちゃん、今日は淋しそうじゃん」
「ああ、圭坊か。ウチは、いっつも淋しい女やで」
一人でぽつん、としているのがよほど気になったのか、圭坊が話相手になってくれた。彼
女も気苦労の多いタイプなのだと思う。


149 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:09

「やぐなちにKUか。みんな、一人では生きていけへんで、違う誰かを愛してしまうねん」

楽屋はしん、となった。
多分、言葉の意味が分からないのだろう。
私には、よっく分かったが。そしてムカついたが。

「つんくさん!」
「おはようございます」


150 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:09

みな、がたん、と立って、挨拶した。
つんくさんは、松葉杖を手に、入り口で挨拶はええから、まあみんな座って、と促した。
なんだか、吉澤の表情がこわばっているような気もしたが、石川がまとわりついて、やれ
やれ、って感じで腰を下ろした。
(吉澤は、なんだか男っぽくなったような気がする)

「入院ばっかしててもヒマでな、ちょこっと様子みに来てんや。差し入れもあるで」
と、つんくさんはいつもの軽い調子で、おはぎとキムチ(ナゼにそんな組み合わせを?)
をみなに振る舞った。


151 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:10

私はつんくさんにすすっ、と寄って
(昨日、手術じゃなかったんですか? しばらくは、病院から出られないって)
(おう、もう弾は抜いたから大丈夫や。1日寝てたら、飽きた。それよりもな――)

本番が始まる。今日は、お願いモーニングだ。
ニセ矢口には(よう見とくねんで。いけるようやったら、すぐにでも仕事に入ってもらう
からな)とよく言って聞かせて、スタジオの隅で見学させた。


152 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:10

私は、うわの空だった。
つんくさんは、収録が終わったら、ニセ矢口を連れて、矢口をお見舞いに行ってやってく
れ、と言ったのだ。

(矢口に逢える)

かれこれ、もう一週間近く、矢口には会っていない。事情が事情なこともあって、なんだ
か、とても彼女の顔が見たかった。
認めたくないが、ずっとこの矢口に似た顔を見ていると(しかも、素朴でいい子なのだ。
この子)本当の矢口はどんな感じだったのか、ふい、と忘れてしまいそうになるのだ。


153 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:10

夜遅く、つんくさんの呼んでくれたタクシーに乗って、私たち3人は、山奥のひっそりと
した病院へ向かった。

本当に、それは、人里離れた場所にあって、淋しげだった。真夜中なのに、受付は開いて
いて、そういう都合のある人たちが主に受け入れられている病院なのだなあ、と感じた。

「じゃあ、俺はここで待ってるからな。二人で、矢口に会ってやってくれ」

看護婦に案内されて、矢口が入院している個室にたどり着いた。


154 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:11

薬の匂い。
クリーム色の壁。
スチールパイプのベッド。

殺風景に見えたのは、部屋の中がモノトーンだったからだ。普通なら、お見舞いの花やら
果物やらで色とりどりのはずなのに、と、手ぶらで来たことを、ひどく後悔した。

ふわふわの羽毛ふとんに半ばうずもれるように、彼女は寝かされていた。


155 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:11

久々に、矢口を見た。
矢口は、本当に弱々しくて、小さく見えた。

(矢口?)
と、小声で呼ぶ。

矢口は、まぶしげに、目をぱちぱちさせて、
「あ、裕ちゃんだー」
細い声で、矢口は力無く笑い、私に向かってやせた腕を差し出してきた。


156 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:11

私は、どうしようもなく愛おしくなって、寝ている矢口をぎう、と抱きしめた。汗の匂い
がした。それは、凝縮された矢口の匂いみたいで、私は首筋に鼻を押しつけて、くんくん
と嗅いでしまった。

「えへへ、嬉しいなあ。裕ちゃんが来てくれるなんて」
エエ子にしてたか? どっかしんどくないか、と話しかけながら、矢口の頭を撫でてやる。
矢口は目を細めて(裕ちゃんに逢えたら、なんだか元気になったよ)と、ひなたの子猫の
ような笑顔を作った。


157 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:11

「その子が、新しい私なんだ」

病室の隅に、ひっそりと立っているニセ矢口を見る。
ニセ矢口は、ぺこり、と頭を下げた。

「すごいねえ、そっくりだねえ」

ため息のように、矢口は言った。そして黙った。
目を閉じて、もう私、いらないよね、と、つぶやいた。


158 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:12

「なに言うてるのん!」

どうして、泣けてくるんだろう。
ここは、矢口を励ましてあげないといけないのに。
でも、この小さな矢口を見ていると、このまま芸能界を続けさせてもいいものだろうか、
とも思えてくるのだ。
実際、彼女はこんなにもボロボロになっているのだから。

「ゴメンね、裕ちゃん。泣かないで」
(お見舞いに来たウチが慰められてたら、話にならんわ)

ニセ矢口は、気を使ってくれたのだろう。そっと病室から出ていく気配がした。


159 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:12

私は、我慢して涙を止めて、少しおどけて言った。
「矢口、あんた、身体クサイで」
「ちょっとー、いきなりそれはないんじゃないの? 裕子ぉ」
どちらも、笑いながらの会話だ。
「ほら、服脱ぎ。身体拭いたるから」
「襲う気じゃないでしょうね」
「それは、どうやろな?」

ちっちゃな背中。
白くて柔らかい肌。


160 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:12

午前五時。
はしゃいだせいか、矢口は疲れたみたいだ。
身体も綺麗になったことだし、眠った方がいいね。
そう矢口に言って、私は帰り支度をした。
ハッキリ言って、明日の十時から仕事なのだ。帰る時間も入れると、ほとんど休めない。

「次、いつ来てくれる?」
「そうやなあ、ちょっとでもヒマになったら、すぐに飛んで来るわ」
うん、と矢口はうなづいた。
本当は、二人とも分かっていた。そう簡単に、こうやって会う時間を作れるほど、娘。は
ヒマじゃないって。
分かっているから、約束は出来なかった。


161 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:13

「ねえ、裕ちゃん。さっきの、私の代わりの人、呼んで来てよ」
「うん? ええよ。どうしたん」
「彼女に、お願いしたいことがあって」
ニセ矢口を連れていくと、矢口から、二人っきりにして、と頼まれた。私は、病室の外で、
待つことにした。

五分ほどして、ニセ矢口が、病室から出てきた。
「なに話してたん?」
本物の矢口に会ったばかりだからだろう、ニセ矢口には、ことさら冷たい口調になってし
まう。
「中澤さんを、よろしくお願いしますって、おっしゃってました」
「ふーん」


162 :やぐちゅー3:2000/11/07(火) 23:13

不思議な感覚。
いつだって、違和感でしか、私は真実を感じることが出来ない。私が本当のことを知るの
は、大抵は、すべてが終わった後なのだ。

でも、どうして、想像がつくだろう。
今、病室にいる矢口とは、もう二度と逢えないのだ、なんてことを。


163 :申魔法楽団:2000/11/07(火) 23:13

……長くなりそうだ続く。

164 :log0076:2000/11/07(火) 23:28
長くて、ええがなええがな。藁

165 :名無し娘。:2000/11/08(水) 03:35
うげ、急にしんみりかい
やぐちぃ〜(涙

166 :名無し娘。:2000/11/08(水) 20:21
なんか方向が変わってきた気もするけど
やっぱおもしろい。

167 :名無し娘。:2000/11/08(水) 22:00
ニセ矢口はストリッパーだったんだろうか・・・

168 :名無し娘。:2000/11/08(水) 23:29
なんだかんだ吉澤も中澤もつんくの術中にはまっているな
恐るべしつんく!!
市井もそのうち、そうなってしまうんだろうか……

169 :名無し読者:2000/11/09(木) 06:54
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。

170 :名無し娘。:2000/11/10(金) 00:32
なっち・・・(わ

171 :名無し娘。:2000/11/10(金) 17:53
いちごまはやらんの?

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